Departure's borderline

フリーランス編集/ライターのいろいろな興味事

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“好き”を仕事にするって幸せ?

 

 

2020年3月号の光文社「JJ」。

表紙にドドンと書かれた特集タイトルは「”好き”を仕事にするって幸せ♡」でした。

 

JJ(ジェイジェイ) 2020年 03 月号

JJ(ジェイジェイ) 2020年 03 月号

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 雑誌
 

 

大学生をターゲットにした雑誌らしく、その中身は

“好き”から逆引き!憧れ職業図鑑2020

憧れの「フリーランス」って私もなれるの?

といった、「イマドキ就活ネタ」が並びます。

 

書店に並ぶ数々のファッション誌。その中からこの表紙を見て、本当にそうなのかな、と思ったんです。

 

***

 

先日、年下の男の子(ココではAくんとしておきます)とお酒を飲んでいたとき、ポロっと質問をしました。

 

私「Aくんにとって仕事は、自分を表現するツール? それともお金を稼ぐツール?」

A「そうですね…。会社の人には言えないですが、お金を稼ぐツールです」

 

 

Aくんは、自分が好きなことを仕事にしたら、自分が疲れてしまいそうで。とも話していました。好きは好きのままでいい、と。

 

…そうかぁ、好きを仕事にしたら疲れてしまうのか。Aくんはとても優しくて感受性豊かな子なので、話を聞いていて自分の中でも納得してしまいました。Aくんの「好き」をAくんが仕事にしていたら、自分の精神的にキツい物事も受け止めなければならない必要性があるからです。

 

 

じゃあ、私は?

私「私にとって仕事は、自分を表現するツール? それともお金を稼ぐツール?」

私「正社員の仕事はお金を稼ぐツール。フリーの仕事は自分を表現するツール」

 

私は、大好きな「日本語」を仕事にしました。編集とか、ライターという肩書きは、大事にしているし、今後も絶対に手放したくない、もっと成長したいと思っています。

 

 

でも、二つの軸があります。

一つが正社員の仕事の軸。もちろん文章を書くお仕事だけど、名前が出るわけじゃないから「誰が書いているのかわからない文章」を心がけているし、結局朱入れられたらそういう文章になる。自分にとっては、自分を表現するツールでは決してなくて、組織に属している以上、自分を殺して書いていかなければいけないこともわかっています。

ある程度、「これは書きたくないなぁ」っていうものもあるけど、そこは我慢しなければいけない。だからこそ、正社員の仕事は「お金を稼ぐツール」。

 

もう一つが、フリーの仕事の軸。正職を手に入れてからは、生きていくために必須の仕事ではなくなったので、ある程度自由が効くし、ある程度は仕事を選ばせていただいている(正職が忙しい以外の理由ではほぼ断らないけど)。名前も出ることが多いし、読者に「書き手の顔が浮かぶ」と思われる文章が書きたい、色のある文章が書きたいといつも思っています。

もちろん、フリーのお仕事にだって「やりたくないなぁ」と思うことはあるけれど、正職と比べたらその頻度がぐっと少なくなる。だから、フリーの仕事は「自分を表現するツール」。

 

 

一時期、フリー一本で食べていこうと思った時期がありますし、実際食べていけていました。でも、その時はフリーの仕事が「稼ぐためのツール」でしかなかったので、辛い以外の感情がなかった気がします。文章に関われるのは楽しいし、そのぶん「日本語」と関係ない仕事に就いていたかもしれない自分、よりははるかに楽しい人生を送っていると思います。

 

ですが、好きなことを「完全に食べるための仕事」にしていたとしたら。たぶん、私も文章を書くのがイヤになってしまっていたのではないかなーと思うんです。私にとって、今のワークバランスは、一番ちょうど良いものなのかもしれません(物足りないとは常々思っているけれど!)。

 

 

 

最低限の生活が保証されていないと、「”好き”を仕事にするって幸せ♡」という考えには至らない、ということを、社会人になってから知りました。

だから、「JJ」の表紙を見て、素直に共感した女子大生たちに言いたい。

 

本当に「”好き”を仕事にするって幸せ♡」?