Departure's borderline

フリーランス編集/ライターのいろいろな興味事

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壮大すぎる中村佳穂のMV -細田守監督『竜とそばかすの姫』を観てきた

 

だいぶご無沙汰しております。最近なんだかバタバタと追われておりまして、こちらは放置しておりました……。週1ペースで更新できるといいな~なんて思ってはいるのですが……。

 

さて、自他ともに認める映画苦手マンな私ですが、ひょんなきっかけで細田守監督の『竜とそばかすの姫』を観てきました。

細田守作品と言えば言わずもがな「サマーウォーズ」「時をかける少女」といった名作があるわけですが(実は私2作ともに観たことありません)、今回は一味違う作品になっていると聞いて……。主題歌が中村佳穂×millenniumparadeということもあり、音楽目当てに観てきました。

私は音楽目当てに観に行って、大満足の結果だったのですが、ネット上のレビューを観てみるとそうでもないらしく、せっかくなので私なりの感想を残しておこうと思います。

 


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高知の田舎町で父と暮らす17歳の高校生・すずは、幼い頃に母を事故で亡くし、現実世界では心を閉ざしていた。ある日、親友に誘われたことをきっかけに“もうひとつの現実”と呼ばれるインターネット上の超巨大仮想空間〈U〉に「ベル」というアバターで参加することに。ずっと秘めてきた比類なき歌声で瞬く間に世界中から注目される歌姫となったすず(ベル)は、〈U〉の中で「竜」と呼ばれ恐れられている謎の存在に出逢う。凶暴ながらもどこか孤独な竜との出逢いをきっかけに、すずは自分の中にある迷いや弱さと向き合っていく――。歌が導く奇跡の出会いと成長の物語!

Amazonより引用

 

以下、若干ネタバレあります。

  1. 壮大すぎる中村佳穂のMVとして観たら最高
  2. 映画として観たらどうなのか
  3. まとめ

 

1.壮大すぎる中村佳穂のMVとして観たら最高

映画苦手マン私が「それでも観たい!」と思ったきっかけは、やはり主題歌。中村佳穂×millenniumparadeという組み合わせ、絶妙に相反する音楽と声が合わさったら、どういった作品になるんだろうと考えていました。

結果は予想をはるかに上回るものに。『竜とそばかすの姫』主題歌である『U』を聞いた途端、「これはすごい曲を出してきた」と思ったと同時に「細田作品の主題歌…?」ともなりました。


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怪しげなピチカート、絶妙なアクセントになるピアノ、裏で常に鳴り続ける乾いたパーカッション。ハスキーがちな中村佳穂の声の特徴もしっかりととらえた常田大希の音楽力は、さすがとしか言いようがありません。

YouTubeでこの曲を聴いたとき「ああ、映画館に観に行こう」と思いました。

 

この部分はネタバレになりますが、冒頭、主人公Belle(CV: 中村佳穂)が大きなクジラに乗って『U』を歌いながら登場したシーンは、全身鳥肌が立ちました。今までの細田作品から守られる繊細さ、そしてCGも利用したダイナミックさは新しい細田守作品の扉を開いたような感覚。「美しい」という言葉がぴったりの華やかさ……。

 


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劇中歌のうち、Belleが歌うものは
「歌よ」
「心のそばに」
「はなればなれの君へ」
の3つ。

「歌よ」は悲しみと迷いに満ち溢れ、「心のそばに」は人に寄り添うはかなさや大切さを体現、「はなればなれの君へ」はネット世界という近くて遠い、広い海の中にいるたった一人へ届けたいという、Belleの”中の人”すずの心情をうまく表しています。

タイトルからしてストレートなんだけど、中村佳穂のあの声を通して聞くBelleの声が素晴らしすぎる。『U』以外は完全初見だったのですが、歌詞選びも上手いなと感じます。中村佳穂の声って歌詞聞き取りやすいなと思うのは私だけでしょうか。

 

とにかく、中村佳穂が演じる”Belle”の一つの物語を歌でたどっていくこのストーリー、私は中村佳穂の壮大なMVとして受け取りました。結果大満足。観に行ってほんとうによかったと思っています。

 

2.映画として観たらどうなのか

 

大満足で帰ってきた私ですが、『竜とそばかすの姫』のレビューはさほどよろしくないことや、周りの観た人たちが口をそろえて「ストーリーは…」と言っているのを聞いていました。

正直私は映画に詳しいわけでもないですし、映画館に足を運ぶのも年に1~2回程度のことですから、詳しい批評をするわけではないのですが……。たしかに『美女と野獣』そっくりだなという部分と、「ストーリーとして端折ってる部分が多いな」の部分は感じました。

 

美女と野獣』に似ているはおそらく細田監督も意識してやっているところではあるのですが、ダンスシーン等「モロ」なところはちょっと多かったかも。

 

「端折り」については、以下ネタバレですが、

  • 「Belle」の外見はなぜルカちゃんに似てしまったのか(写真隣にいたから?すずがルカちゃんにあこがれているから?)
  • すずが合唱団に入る経緯
  • 夜行バスを降りてから東急駅に降り立つまで
  • ルカちゃんが「はなればなれの君へ」で急にサックスを吹いたのはなぜ(歌でもよかったと思う)
  • ペギースーの「私と同じ普通の女の子」の発言意図とオリジン
  • 恵くん智くんのその後

など…ちょっと端折られている気がしました。

このあたり、小説では補足されているのでしょうか? さっそく読んでみたいなと思っています。

 

3.まとめ

総じて私はいい作品だと思いました。今までの細田作品よりもハラハラドキドキがちょっと少ないけれど、それをカバーする楽曲。本当に楽曲が良すぎるんです。中村佳穂、好きだ~~~~。

 

余談ですが、私は中村佳穂、こちらのアルバムのイメージが強くて、「黄色」のイメージだったんです。Belleのイメージカラーはピンク。納得いかなかったのはここだけかもしれません。(黄色にしたらおそらくディズニーの『美女と野獣』そのものになってしまうという判断なのかなーと。)

あ、今サントラヘビロテしてます。これから観に行くならぜひ「中村佳穂の壮大なMV

を見に行くと思って」、どうぞ。最高です。

 

 

2020年私的ベスト10

 

去年は2010年代私的ベストアルバムというタイトルを、年明けにアップしました。

こういうエントリーって、12月末とかにアップするべきだと思うんですけど、私の腰が重いものでね……。

 

それでは2020年私的ベスト10です。順不同で全部1位です。

 

 

Walking In The Rain(Alright)/DedachiKenta

 

Walking In The Rain (Alright)

Walking In The Rain (Alright)

  • DedachiKenta
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 今年の6月に発表された1曲。シンセサイザーの音遊びがとても心地よくて、在宅中何度もリピートして聞いていました。もともとは全部英詞だったものを一部日本語訳した歌詞も、言葉遊びがかわいらしく、耳触りもなめらかでとても心地いいです。

 

 

誰かが夜を描いたとして/cadode 
誰かが夜を描いたとして

誰かが夜を描いたとして

  • cadode
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

正直今年はcadodeさんを知れてよかった。歌詞が力強くて、音作りがシンプルなのがとても好きです。この「誰かが夜を描いたとして」はPVにさまざまな仕掛けがあるのが面白いなぁと思っています。

 

 

ほたるのうた/リュックと添い寝ごはん
ほたるのうた

ほたるのうた

  • リュックと添い寝ごはん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 若い才能ってすごいなぁ。彼ら、高校卒業したばっかりなんですよ。
ボーカルの力みすぎない歌声と、アコースティックの柔らかな曲調がとてもマッチしていて、キレイな音楽だなぁと感心しています。

 

 

Over/LUCKY TAPES
Over

Over

  • LUCKY TAPES
  • R&B/ソウル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 今年一番聴いたアルバムはこれです。LUCKY TAPES。その中でも「Over」はダントツで素晴らしかった……。歌詞の中に「向日葵の咲かない夏」というフレーズがあるんですが、なんとなく2020年の情勢とリンクして、苦いなぁって感じました。

 

 

君とdrive/YONA YONA WEEKENDERS
君とdrive

君とdrive

  • YONA YONA WEEKENDERS
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 ひたすらに良いです。サビ前のメロウな感じと、サビの疾走感がたまらない。タイトル通りドライブ中にずっと聴いてました。YONAYONAは新曲が出るたびにスキが増していってしまうので困ります。

 

 

化かしHOUR NIGHT/ビッケブランカ VS 岡崎体育
化かしHOUR NIGHT

化かしHOUR NIGHT

  • provided courtesy of iTunes

 きつねとたぬき、なるほどね、とPV見始めたらその言葉遊びと曲調がスルメすぎてリピートしまくった1曲。ビッケさんの斬新さと、岡崎体育さんのポップさが最強コラボすぎてもっと出してほしいです。

 

 

突破口/SUPER BEAVER
突破口

突破口

  • provided courtesy of iTunes

 アニメ「ハイキュー! TO THE TOP」の今期OP。ハイキューはどうしてもSPYAIRのイメージがぬぐえないんだけど、これはいい意味で新しいハイキューOPでした。歌詞に「今をやめない」というフレーズが繰り返し出てくるんですが、それが力強くて春高バレーぽさがあってエモくてちょっとだけ泣いた。

 

 
LOST IN PARADISE(feat. AKLO)/ALI
LOST IN PARADISE (feat. AKLO)

LOST IN PARADISE (feat. AKLO)

  • provided courtesy of iTunes

もともとALIは大好きでよく聴いてたんですが、新曲がアニメ「呪術廻戦」EDで流れてきたときびっくりしすぎて叫んだ。ALIが世間に知られてしまった……! ALIの良さをふんだんに取り入れながら、AKLOさんのラップがいい味出しててとても好きです。

 

 

Ideal/草田一駿


Kazooshi - Ideal

これは今年のベストに入れていいのか迷うけど、外せなかった。まぎれもなく天才。FUJIROCKのYouTube配信で見たんだけど、もうこれはすごいです。どういう育ち方をしたらこうなるんだろう。インスト曲なのに楽器がひとつひとつキラキラ歌ってる感じがします。

 

 

ハロー/時速36km
ハロー

ハロー

  • 時速36km
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 時速36㎞はなんかグサグサ刺さる歌詞が多くて、元気のないときに聞くと元気づけられすぎて泣いてしまう。「ハロー」も初聴でボロボロ泣いた。「他の誰かに理解されないことがうれしかった」とかいうパワーワード。だいすきです。

 

 

 

自分の好みをふんだんに詰め込んだら、2020年を象徴するあれこれが入らなくなりました。2021年も好きな曲を探しながら楽しんでいきたいです。

 

 

 

 

 

 

これはまだ、スタートに過ぎない。 - [Alexandros] 「THIS SUMMER FESTIVAL 2020」の現地で感じたこと

 

rockin'on 内「音楽文」にて掲載していただきました。

ongakubun.com

 

1枚15,000円のワンマンライブチケット。

今まで、その額は彼らに対して出したことがなかった。

でも、出してでも行きたいと思った。

 

2020年8月15日(土)、ZeppHanedaのこけら落とし2日目に開催された[Alexandros]のFC限定ライブ「THIS SUMMER FESTIVAL 2020 FC限定 CREWの為のリクエストパーティー」。キャパは約500名。いくらFC限定とはいえ、無理だろうと思いながらも、長年ドロスを追いかける友人とともに応募した。

 

当落発表メールを、何回見直したことだろう。夢じゃないだろうか、本当に当たってしまったのだろうか。

 

「当たった、かも。」

「当たってる、ね。」

 

スクリーンショットを添えて送った友人へのLINEは、彼女の返信とともに確信に変わった。行ける。ライブに行ける。しかも、いちばんだいすきな彼らのライブに!

 

ライブハウスに行く。この半年ほど、私たちが待ち焦がれていたことだ。生音を浴び、音楽を称えて手を掲げる。なんていい光景だろう。想像するだけで涙が出そうだ。私たちは二人で、当日はどんなセトリになるのか、はたまた半年ほど待ち望んだ景色はどんなものだろうかと、胸を高鳴らせてその日を待った。

 

 

**

 

「ごめん、行けなくなった」

 

彼女からのLINEが届いたのは、ライブ当日を3日後に控えた日のことだった。

彼女の職場で、コロナウイルス感染者が出たのだという。遠方に住む彼女は東京に来ることができなくなった。新幹線も、ホテルも手配した後のことだった。

 

私もキャンセルして、公式チケットリセールに出そうか。まだ間に合う。15,000円のチケットを彼女だけ潰してしまうのは気が引ける。そう考え、彼女に伝えると、こう返ってくる。

 

「行ってきてほしい。私の分以上に楽しんでくれなきゃ許さないよ」

 

そう告げた彼女はどれほど悔しかったことか。まだ襲い掛かるコロナウイルスという脅威に、半年ぶりだと泣いてよろこんだ私たちはまだ勝てないでいる。

 

 

**

 

ドロスのライブを一人で見に行くのは初めてだった。いつもは必ず、隣に彼女がいた。ファンになってもう何年が経つだろう。思い出せないほどに長い間、彼女はずっと隣で私とドロスを見てくれた。

 

現地に着くまでの道のりも、開演を待つ間も、このときめきを共有できる人がいないさみしさを噛み締める。一人ライブは慣れている。でも、ドロスを見るなら彼女と二人がいい。彼女が座るはずだった、2席隣の空席を何度も見つめた。

 

 

**

 

リクエストパーティーは最高だった。さすがはFC会員限定、「ライブで盛り上がる定番曲」などありやしない。ワタリドリも、Starrrrrrrもなかった。ただ、私たちファンが今聞きたい曲が詰まった、最高のセトリだった。リクエストアンケートを15位から1位まで順に演奏していくというセットリスト。1位は、[Alexandros]が[Alexandros]になる前の、[Champagne]最後の曲、「Plus Altra」。

 

==

But here we are standing

<<だけど僕たちはここに立っている

 

right in front of you, people

<<君、そしてみんなの目の前に

 

But we knew it from the start

<<だけど俺らはわかってる。まだスタートに過ぎないと

-「Plus Altra」

==

 

私の友人だけでなく、このライブに来たくても来られなかったすべてのファンに。はたまた、このスタートを見届ける証人となった私たちに刻み付けるように。強く語りかけてくれているような、1位「Plus Altra」だった。

 

 

**

 

まだしばらく、コロナウイルスとの闘いは続くだろう。それでも、キャパを減らしてでも、彼らのようないわゆるモンスターキャパシティバンドが有観客ライブを開いてくれた。音楽界にとって“最初の一歩”になったことは間違いない。

 

彼らはステージに立っている。

私、そしてみんなの目の前に。

だけど全員がわかってる。まだスタートに過ぎないと。

それでも全員が信じてる。そのスタートは、彼らが切ってくれたのだと。

 

ライブを終え、ZeppHanedaを後にした私は彼女にLINEを送った。

「最高だった。次は現地で。」

2020年上半期私的ベストアルバム8

 

さてさてもう2020年も半分が終わってしまいます。

今年は外に出られない事情もあったことですし、なんだかこの半年は生きた心地がしなかったですね。ライブもフェスも行けなかったわけだし。おかげでラジオと音楽鑑賞が滾る滾る。

 

というわけで上半期の私的ベストアルバムを8つ出してみました。すべて順不同、同率1位です。キリがいいし10個出そうかとも思ったんだけど、無理して出すより自分が納得できる8つを厳選しました。

 

 

藤井風『HELP EVER HURT NEVER』

2020年上半期の音楽で、このアルバムは外せないでしょう。藤井風初のオリジナルフルアルバム。この上半期で一番聴いたアルバムと言っても過言ではない。藤井風は知人に教えてもらって初めて聞いたんですが、その独特の声・歌い方にどっぷり漬かりました。土曜ANN0に出演した時には深夜3:00~5:00までリアタイしました。
推し曲:罪の香り

HELP EVER HURT NEVER(初回盤)(2CD)

HELP EVER HURT NEVER(初回盤)(2CD)

  • アーティスト:藤井 風
  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: CD
 

 

 

SHIFT_CONTROL 『Afterimage』

個人的に「なんでもっと早く聴かなかったんだ」と悔やむほどにはまった。こちらも初のフルアルバム。岐阜出身の4ピースですが、Vo.アサノ チャンジの声がよい。エモめの歌詞と合わせてとても気に入りました。
推し曲:かまうな

Afterimage

Afterimage

  • アーティスト:SHIFT_CONTROL
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: CD
 

 

Vaundy 『strobo』

こちらのブログでも紹介した、Vaundyの1stフルアルバム(あれ、ここまで全部1stだな)。彼の特徴はとにかくその歌唱力。ふり幅の大きいジャンルに捕らわれない声は、これで本当に20歳なのかと思わせるほどでした。こちらもほぼ毎日のように聞いているアルバムの一つです。
推し曲:僕は今日も

strobo

strobo

  • アーティスト:Vaundy
  • 発売日: 2020/05/27
  • メディア: CD
 

 

さかいゆう 『Touch The World』

はい!みんな大好きオーガスタ!!! オフィスオーガスタの見る目ってほんとうに素晴らしいと思うんですよね……。さかいゆうはその中でも特に好きなアーティストのひとり。ポップスという枠は意識しつつも、それをさかいさん独自の手法で崩していくこのかんじがたまらない。今回のアルバムは最高傑作だと思ってます。何度聞いても新しいポップスを見せてくれるんですよね……。たまんねえぇ……。
推し曲:21番目のGrace

Touch The World(初回限定盤)(DVD付)

Touch The World(初回限定盤)(DVD付)

  • アーティスト:さかいゆう
  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: CD
 

 

Sano ibuki  『SYMBOL』

なかなかのクセモノですよ彼は……。もともとはアコギ弾き語りのイメージが強かったのですが、「emerald city」で一気にカラを破ってきたかんじ。こんなSano ibuki初めて。前アルバム「STORY TELLER」も非常に好きだったのですが、半年で軽々と塗り替えてきましたね。
推し曲:emerald city

SYMBOL(初回限定盤)

SYMBOL(初回限定盤)

  • アーティスト:Sano ibuki
  • 発売日: 2020/05/13
  • メディア: CD
 

 

秋山黄色 『From DROPOUT』

もともと注目度は高かったものの、「猿上がりシティーポップ」で一気につかまれ、「モノローグ」で引きずり落されたって感じですかねぇ。実は東名阪ワンマンツアー当たってまして……。もうあの規模のハコで彼を見られることはないのだろうな。きっと次回はZepp規模のライブハウスを仕掛けてくると思います。もっと聴きたい。
推し曲:モノローグ

From DROPOUT (初回生産限定盤) (DVD付) (特典なし)

From DROPOUT (初回生産限定盤) (DVD付) (特典なし)

  • アーティスト:秋山黄色
  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: CD
 

 

中村一義 『十』

両親が好き、という理由で、昔から聴いていた中村一義。4年ぶりのフルアルバムは、やはりそのやさしさが詰まったアルバムでした。最後の曲に「愛にしたわ。」はずるい。泣いてしまうじゃんか。

十 [CD] (通常盤)

十 [CD] (通常盤)

  • アーティスト:中村一義
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: CD
 

 

 

 [Alexandros] 『Bedroom Joule

色眼鏡といわれたら、そうかもしれないけれど、私はやっぱり何度も[Alexandros]に助けられてるんですよね。つらい夜も眠れない夜もずーっとドロスを聴いて乗り越えてきました。だから、彼らがリモートで、しかもBedroomというコンセプトでアルバムを作ってくれるなんて思っていなかった。この時期曲作りすらままならない環境で、こうして知恵を絞ってアルバムをリリースしてくれたのは、本当にうれしいなとおもいます。

今までの激しくさわやかなロックとは全く違う、ベッドルームで聴くのにちょうどいいアレンジの数々。ドロスの新しい一面を見られたなとうれしくなりながら、今はこれを聴きつつ眠りに落ちてます。
推し曲:Adventure (Bedroom ver.)

 

 

 

今年もあと半分。どんな音楽に出会えるのかが楽しみです(毎回言ってる)。

あと秋くらいからはフェスとかライブとか再開できるような世界になっているといいな。もしCDJがやるなら4日通します笑。

 

 

フジファブリックはずっとフジファブリックだったのに。 -こないだの、帰省したときのこと

 

 ※rockin'on.com 内、「音楽文」にて掲載していただきました。

 

ongakubun.com

 

先日、週末を利用して実家に帰省した時の話だ。

「ねえ、フジファブリックって知ってる?」

普段、ジャズやクラッシックしか聴かない母が、私にそう尋ねてきた。話を聞けば、先日テレビで志村正彦の特集をやっていたのだという。

「なんだか、すごく印象的な声でね。耳に残っちゃったんだ」

あまりに唐突で、いつもの母の口には似合わない「フジファブリック」という単語に驚きながらも、私は母に、自分とフジファブリック、そして志村との出会いの話をすることにした。
 

**
私がフジファブリックに出会ったのは、2012年、「徒然モノクローム」がきっかけ。すでに志村はこの世にいなかった。フジファブリックといえば、3人体制というのが私のファーストインプレッションだった。

軽快なそのリズム、少しけだるげなボーカル、明るい曲調。私が出会ったのは「新・フジファブリック」だったのだ。

私は「前・フジファブリック」をあえて聴かなかった。「前・フジファブリック」時代の曲を「新・フジファブリック」が演奏したものも、とことん避けた。もちろん、ボーカルが志村であることは知っていたし、志村がすでに亡くなっていたことも調べればすぐにわかる。代表曲が「若者のすべて」であることも理解していた。

でも「新・フジファブリック」に惹かれた私が、志村のいた時代の「前・フジファブリック」を聴いて、好きだと思うのは、なんだかずるい気がしたのだ。言い方は悪いが、悲劇のヒーローには媚びたくなかった。
 

**
そんな私が、「前・フジファブリック」に触れてしまったのは、ROCK IN JAPAN 2017。忘れもしない、レイクステージ。「新・フジファブリック」が歌う「若者のすべて」を聴いてしまったのがすべての元凶だった。

正しく言えば、レイクステージの次のアーティストが見たかったから、前のアーティストであるフジファブリックのラスト曲「若者のすべて」がたまたま聴こえてしまった、が正解。フジファブリックの生歌を聴いたのは、実はこの時が初めてだった。
 

「最後の花火に今年もなったな
何年経っても思い出してしまうな」(若者のすべて)

違和感があった。私の知っている「新・フジファブリック」ではなかった。観客も、ステージにいるフジファブリックのメンバーもみんな「ここにはもういない志村」を想って、手を挙げていたんだと思う。

「新・フジファブリック」とか、「前・フジファブリック」とか、そんなレッテルを貼って志村の歌声を聴かなかった自分が恥ずかしくなった。

フジファブリックは、いつなんときでも、フジファブリックだったのに。
 

その翌日、私はとうとう志村の声の「若者のすべて」を聴く。フジファブリックに出会って5年。聴かないでいて、ごめんね、と、スマートフォンの小さな画面の中で歌う志村に向かってつぶやいた。
 

**
これが私の、フジファブリックと、志村との出会いの話だ。
 

母に話し終えたとき、母は「志村さんの声の『若者のすべて』を聴きたいね」と言った。あの直後に買った、「若者のすべて」のシングルCDを母とふたり、聴いた。

志村の声は世代を超えるんだ。フジファブリックは、志村がいたときからフジファブリックだし、今だって志村は人々を魅了し続ける。悲劇のヒーローなんかじゃない。今も生きるヒーローだ。

この状況がおちついて、ライブハウスが開いたなら、母をつれてフジファブリックのライブを見に行こう。そう思った。

 

若者のすべて

若者のすべて

  • provided courtesy of iTunes
若者のすべて

若者のすべて

  • 発売日: 2016/05/25
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

ピンクのジャケ写でいいと思う。-Vaundy『strobo』

 

共感覚持ちの私にとって、Vaundyの色は赤です。

真っ赤ではなくて、少し濁りがあって、ワインレッドまではいかないけれど、大人っぽい、でも少し子供っぽさが残る赤。

 

だから、今回1stアルバム「strobo」のジャケットがピンク一色だったのを見て、最初すごく違和感を感じたんです。えーーちがくなーーーい? って。

 

結局のところ、ピンクでよかったと思います。その答えは最後に。

 

strobo

strobo

  • アーティスト:Vaundy
  • 発売日: 2020/05/27
  • メディア: CD
 

 

 

完成度で言えば、”この年齢で”この完成度か、すっごいバケモンだな。という感想。というのも、Vaundy、まだ19歳(誕生日は6月6日なので、もうすぐ20歳ですね)。ただし、冠詞にかならず”この年齢で”がつく気がする。

 

YUI絢香を輩出したことでも知られる音楽塾ヴォイス出身のその歌唱力は見事なものですし、色っぽくスモーキーな曲から元気ポップな曲調まで歌いこなすふり幅もさすが。

 

 

 

最初にVaundyを世間に押し出した「東京フラッシュ」は、その歌詞のけだるげなイメージをうまく曲に載せてますし、Cメロのピアノがめちゃくちゃささりますね。

 

東京フラッシュ

東京フラッシュ

  • Vaundy
  • ロック
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東京フラッシュ / Vaundy :MUSIC VIDEO

 

 

「東京フラッシュ」で一気に「ああ、エモい曲うたうんだな」と思わせておいて、「怪獣の花歌」。さわやかなんですよ。
ふり幅まじですごい。サビの疾走感はもちろん、オクターブ下でハモりを入れてるんですが、その共鳴感と音域の広さ。Cメロのセルフハモの神々しさ。

クセのない声だからこそできる違和感のないメロに寄り添うハモが美しいなぁと思います。

 

怪獣の花唄

怪獣の花唄

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か!ら!の!またこれもエモエモな「life hack」。実は私が初めて聞いたVaundyはこの「life hack」なんですけど、「自分のことを好きになっていく」っていう歌詞にちょっとヤられちゃって。

コーラスにさとうもかを迎えたこの曲、途中で電話のやりとりっぽいワンシーンがあるのですが、それも青春を謳歌している19歳のありのままの感じがして、すんごい甘酸っぱいんですよねー。

 

life hack

life hack

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life hack / Vaundy :MUSIC VIDEO

 

このアルバムで初登場のマイナー調曲「不可抗力」、ちょっとテクノっぽさを加えながらAメロをラップで整えた「soramimi」、コーラスがこれまた印象的な心地いいテンポ曲「napori」。

 

そしてなんといっても「僕は今日も」がこのアルバムの目玉かなと思いました。

壮大なピアノと低音パーカスから始まる、少し切ない物語のような曲。バックサウンドに大きくリバーブをかけてるので、声とのミキシングが難しいはず。特にコーラスにはラジオサウンドのようなエフェクトがかかってるっぽいので、よく調合したなあという印象です。

 

僕は今日も

僕は今日も

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僕は今日も / Vaundy :MUSIC VIDEO

 

ラストはアコギで軽快に進む「Bye by me」。歌詞の詳しい解釈は割愛しますが、「僕、このアルバム頑張ったよ、また会おうね」と言われている気がして。とても素敵でした。

 

 

まとめますと、このアルバムのジャケットはピンクでよかったと思います。

たしかにVaundyの声って赤のイメージなんですけれども、”この年齢で”が冠詞につくアルバムだからこそ、まだ粗削りで、伸びしろがあるんだろうなって思うんです(超上から目線)。なら、赤じゃなくて、一つ手前のピンクでいいと思う。これからどんどん赤が濃くなって、今よりももっと深い赤になっていくと思う。

 

にしても、私はこのアルバムとても好きです。1stアルバムとしての完成度として、非常に高いものが出てきたな、という印象。

きっとタイアップとか今後もたくさんやってくれるアーティストだと思うので、もっと公に出てきてくれることを期待します。

 

 

まいっちゃった、時の、「それでいいじゃん」って言ってくれるうた-キクチリョウタの声で泣きたい

 

あー忙しい。すっごく忙しい。

 

在宅期間など関係なく仕事量が半端ないです。この会社に来てから2番目くらいのピーク(一番やばかったのは去年の7月なので、たぶんこの時期は忙しいんだと思う)。

 

私は仕事にケアレスミスが多いタイプなので、忙しいに比例してぽろぽろと見落としが出てくる。その性格がわかってるからこそ、注意してひとつひとつを見たいのに、量が多いから時間をかけられない。負の連鎖。

あくまでケアレスミスであって、大きなミスは幸い今のところしたことがないのだけれど、ケアレスミスも積もればとんでもないミスにつながるんですよ。あー気を付けよう…って思うとげっそり…。負の連鎖…。

この仕事をしている限り、世に出てしまったミスは取り返せない。こないだの日経デジタル「フジロック中止」誤爆事件がいい教訓ですね。

 

www.nikkei.com

 

 

それはおいといて。

 

在宅ワークのいいところは、音楽を聴きながら仕事ができることですね。

もっぱらラジオを流しているのですが、今日ふと「あ、キクチリョウタ聴こう」と思い立って、ちょっといいヘッドフォンを有線でつないで、一日中エンドレスしました。

 

 

たぶん、初めて出会ったのは中学生のころだから、今から10年以上前。当時は「ばずぱんだ」という名前で、歌い手さんをやっていて、当時ボーカロイド文化の一翼を担っていた古川本舗のVocalを務めていた方でした。


【古川本舖】はなれ、ばなれ feat.ばずぱんだ

 

アコースティックギターによく合う、例えるならば、たくさんの落ち葉の上に仰向けに飛び込んだ時に目に映る秋空と、色づいた木々の葉のような声をした、私の大好きなシンガーソングライターさん。

 

彼は、その後18歳で上京し、本格的に音楽活動をスタート。上京のきっかけとなったのは、これも私が大好きなシンガーソングライター、大柴広己さんのライブだといいます。


大柴広己 MV 「さよならミッドナイト」

 

たしかに、方向性は一緒かもしれない笑。


「さよならミッドナイト」- Sing in Twilight-

 

 

昔から寝つきが悪かった私は、大人になった今でもすぐ昼夜逆転してしまうんですけれども、昼夜逆転したなら、朝少し霞がかった朝焼けを見ながら、キクチリョウタを大音量で聴くんです。

なーんか、よくないですか? 眠れなかった夜もひっくるめて、すべて肯定してくれている気がするんですよねこの声。

 

 

今日もたぶんそうでした。

すごくすごく心はまいっちゃってて、もうやめようよって私は思ってるけど、生きるためにはこの仕事を片付けなきゃいけない。

でもまいっちゃったとき、「それでいいじゃん」ってキクチリョウタの歌は言ってくれる。素直にヘッドフォンを耳に着けて、静かに涙を流せる、流させてくれるキクチリョウタの歌が私は好きです。

 

 

 

 

…本気でまいっているらしい。エッセイ(散文)にもならないほどに文章が散っている。しょうがない、それでいいじゃん。

 

Personality

Personality

 

 

サカナクションと越える夜 -サカナクション『#夜を乗りこなす』

 

ライブにいけない。今月は4本、来月はフェスも含めて6本ライブが飛んでいる。生音を浴びることで生きることを感じている私みたいなmusic loversは生きた心地がしないですよ。ほんとうにね。

 

ここ最近、サカナクションが毎週土曜日にYouTubeでライブの配信をしてくれていまして、家のプロジェクターにパソコンをつなぎ、お酒を片手にライブ以上に踊り狂う週末を過ごしています。

 

サカナクションのこの一連のプロジェクトを表すハッシュタグ『#夜を乗りこなす』。これ、もともとはサカナクションの楽曲『さよならはエモーション』の中の歌詞なんですけど。とても今の私たちの心境と合っていて、すてきで美しい日本語だなと思いました。

 

さよなら 僕は夜を乗りこなす ずっと涙こらえ
忘れてたこと いつか見つけ出す ずっと深い霧を抜け

サカナクション『さよならはエモーション』

さよならはエモーション

さよならはエモーション

  • provided courtesy of iTunes

 

 

 

サカナクションのライブのすごさ

サカナクションのライブは、いつも新しい試みがあって、クオリティも高く、非常に面白い。今までに5回ほど現地参戦していますが、そのどれもが完璧で、妥協のない素晴らしいライブだなと感じます。

 

その一つが、おととい18日にYouTube配信があった、2017年『SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around』。これ、幕張メッセ現地で私も見ていたんですけれども、ほかのどんなライブよりも音がヤバかった。

 

だいたい、ライブのスピーカーは左右2つ+ウーファー1つの2.1ch。それを、左右2つ×前中後の3か所、計6つのスピーカーでやってしまおうという、最高音響のライブでした。

 

この6.1chがなにを可能にしたかというと、まず会場の後ろのほうでも音がめちゃくちゃクリアに聴こえること。そして、左右に音を振ったり、前後に音を振るといった、立体音響が可能になっていること。

 

 

サカナクションの音響チーム、『チームサカナクション』は、彼らの多彩な音色を操るために、凄腕が集められていることは有名な話。その裏方たちが丹念に作り上げる「幕張メッセ」という巨大なハコを手玉に取った音作りは圧巻でした。

 

現地参加の私、超後ろで見てたんですけど、スピーカーとの距離が離れるとできてしまう音遅延や反響も少なく、非常にクリアな音で楽しむことができました。

 

 

 

すべてが「新しい試み」

そういった、新しい試みを次々と試してくれるサカナクション、やはりすごいなと感心してしまいます。

 

そういえば、私がサカナクションと出会ったきっかけも、そんな「新しい試み」がきっかけ。私が中学生だったころ、NHKの音楽番組(番組名まったく思い出せません)で『アルクアラウンド』のPVを紹介していたのが、私とサカナクションの出会いでした。

 

アルクアラウンド』のPVは、1曲まるまるワンテイクワンカットのPVながら、カメラの位置によってバラバラに置かれたパネルが歌詞を浮かび上がらせたり、それがエンドレス表現になっていたりと、なかなかにこだわりぬいた演出が魅力的。

 

当時中学生だった私は、このPVにくぎ付けに。すぐにCDを購入し、テープだったら擦り切れているほどに聴きこみました。

 


サカナクション - アルクアラウンド(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)-

 

 

 

サカナクション」だから成せる逆境突破

彼らのすごさはそれだけにとどまりません。

その1つはやはり、唯一無二のそのジャンル。ロックとも、テクノとも違う、「サカナクション」というジャンルが、すでに彼らの手によって築かれているんですよね。

 

曲調や作品が似ているアーティスト…サカナクションが好きな人に薦めるアーティスト…まったく浮かばないですもん。サカナクションが好きな人は、たぶん別枠としてサカナクションが好きなんだと思います。

 

 

そしてもう1つは、この自粛期間であっても、「ほかのアーティストのファンを食っていく」かのような貪欲さが感じられるということ。

 

各方面のアーティストがライブ延期や中止、CD発売の延期などを迫られ、アーティストもファンも疲弊している今、疲弊しているファンを引き込むかのような新しいプロジェクトの数々。

 

サカナクション独自のレーベル「NF Records(あくまでビクターエンタテインメント内レーベル)」を持っていることも強みになり、山口一郎のアイデアマン気質と合わさってこの逆境を猛烈な勢いで進んでいます。

 

 

 

まとめ

サカナクションが私たちmusic loversに差し出した『#夜を乗りこなす』は、もちろん私たちを励ますコンテンツ。でも、彼らは、夜をのりこなしたその先をすでに見据えているはずです。

 

この長い夜を越えた時、サカナクションは、私たちの気づかないうちに、もっととてつもないものになっているかもしれません。

春のヒゲダンはさわやかなエールソング -Official髭男dism「パラボラ」

 

 

2019年の音楽シーンといえば、ヒゲダンだったと思います。

「Pretender」という最強のキラーチューンを手にした彼らは、あらゆるサブスクリプションで上位を総ナメ。その後発売したアルバム「Traveler」はもちろん、2020年2月に発売したシングル「I LOVE…」がドラマ主題歌として大ヒット。老若男女問わず愛されるロックバンドとして名前を日本に轟かせました。

 

 

春になってもその躍進は止まりません。現在はコロナウイルスの影響によってツアー中止/延期に追い込まれている状況はあれども、各種フェスにひっぱりだこ。9月のSUPER SONICには名だたる世界のスターの名前と並んでヒゲダンの名前が発表されました。見劣りしなかった…すごい…。

supersonic2020.com

 

 

さて、そんなヒゲダンがこの春に送り出す最新チューン「パラボラ」は、さわやかなエールソング。2020年「カルピスウォーター」CMとのタイアップ曲で、新社会人に向け「まっしろで、すすめ。」をテーマにエールを送るTVCMに仕上がっています。

パラボラ

パラボラ

  • provided courtesy of iTunes

 


Official髭男dism 新曲「パラボラ」披露 永野芽郁とヒゲダンがCMでコラボ! 『カルピスウォーター』新CM

 

 

この「パラボラ」、意訳するとすれば「放物線」という意味だそうなのですが、彼らの音楽から最近受けていた、音楽的ギミックをとっぱらった、素直でまっすぐな音作りだなという印象を受けました。

 

例えばサビのドラムはずっとシンプルな四つ打ちであったり、藤原が奏でるシンセサイザーもあまり超絶技巧的なメロディーはなく、非常にわかりやすい。

 

また、曲全体で言えることなのですが、ヒゲダンの曲はAs dur(嬰イ長調:Pretender)やCis dur(嬰ハ長調:Stand By You)といった、比較的シャープ、フラットを多用した難しい調で曲を作っていく傾向にありました。が、「パラボラ」はB dur変ロ長調)。耳なじみがよく、吹奏楽部出身の彼ららしい、という印象でしたね。

 

 

ヒゲダンのチューンは、お世辞なしに詞が上手いわけですが、今回も非常に素直で、刺さりやすい言葉が並べられていると感じました。あえて対象を絞らず、あいまいな一人称を使うことで多くの人の共感を得やすい彼らの言葉選びは、「パラボラ」でも健在。誰しもが青春時代に思ったであろうレールを歩くその先に今の自分がいる、といった内容なのかなと思いました。

 

 

彼らがOfficial髭男dismというバンドを結成して、今年で8周年。先日の「SCHOOL OF LOCK!TOKYO FM)」で、藤原はこのように話していました。

 

「バンド結成してからだと、もうすぐ8周年だよね。当然8年もあると、音楽性とかやってることとか変わってくるじゃない? でもこの「パラボラ」が生まれたことで、もう一周回って新しいヒゲダンを始めることができるきっかけになったんじゃないかな、と思っています。」

 

つまり、彼らにとって、すでに1周し始めている。2周め、3周めと重ねれば、それはそれほどパワーアップした彼らの力を私たちは聴くことになる。

 

2019年、大ヒットした彼らは今後どのように私たちに音楽を届けてくれるのか。

彼らの今後も含めて、非常に未来を感じさせてくれる1曲でした。

 

 

Pretender

Pretender

  • provided courtesy of iTunes
I LOVE...

I LOVE...

  • provided courtesy of iTunes
Traveler[通常盤]

Traveler[通常盤]

 

 

うちら、ここで歌っとるよ。- Perfumeに「魅せられる」ということ

 

 

 ※rockin'on.com 内、「音楽文」にて掲載していただきました。

 

ongakubun.com

 

Perfumeというグループが大ブレイクしたのは2007年。かの有名な「ポリリズム」が大ヒットしたのがきっかけだろう。私は当時小学6年生。リビングで眺める音楽番組に出演するPerfumeを見て、その可愛らしい(けど難しい)ダンスをマネたりしていたものだ。

 

特に、ハマることはなかった。Perfumeは、2007年からすでに日本の音楽界において確固たる地位を手にしていたし、テレビの出演やタイアップ起用も多かったから、ニューシングルを音楽番組で見る程度。曲はなんとなく知っているけど、特にCDを買うこともない。Perfumeは生活に溶け込んでいて、その存在感は私の中では薄いものだった。

 

 

時は流れ、2019年。私はずいぶんと大人になった。自分で自由に使えるお金が増えてからは、ROCK IN JAPAN FESに毎夏足を運ぶのが恒例になっていた。

 

2019年8月4日。ROCK IN JAPAN FES 2019の2日目。うだるように暑い。ビールがひたすら美味しい。15時過ぎ、とにかく暑い。風があるから、少し疲れる。

 

一緒に来ていた男友達と、少し休もうかと、ビールを片手に芝生に座り込んだとき、わぁっと、一番大きなステージから歓声が沸き、静まり、そして音楽が流れた。

 

「そう見慣れた いつもの景色が
 変わるの 全てをつなげば
 騒ぎ出す 街中の全てが
 聞こえる。」
(Future Pop)

 

なんとなく、呼ばれた気がした。

―うちら、ここで歌っとるよ。

そう、背中を押された気がした。

 

Perfume、聴きにいこうよ」

重い腰を上げた私は、渋る男友達の手を引いて、大きいステージに吸い寄せられていった。私の目が、彼女たち3人を確認した頃、湿った熱風が私たちの間を吹き荒れていたけれど、ステージ上の彼女たち3人が浴びるこの風は、衣装をなびかせる演出のように見えた。綺麗だ。たくさんの大きなヒレをはためかせる、3匹の金魚が踊っているようだ。純粋に、そう思った。

 

 

彼女たちのステージは圧巻だった。ROCK IN JAPAN FES 2019の2日目、どのアーティストのステージが一番心に残ったかと問われれば、私はPerfumeと即答するだろう。私をステージに引き寄せた「Future Pop」から始まり、「Spending all my time」、「Baby cruising love」といった懐かしのナンバー。3人のハイヒールが激しく踊る「FLASH」。2019年最注目バンドであったKing Gnuがウラだったから、それを取り上げて自虐する可愛らしいMC。観客参加型のP.T.A.のコーナー。すべてがよかった。「魅せられた」と表現するのが一番しっくりくるくらいに。

 

 

彼女たちは儚くて、手に届きそうで届かない。手にとったら消えてしまいそうな、はじける炭酸のような笑顔を振りまきながら、ものすごく難しいダンスをハイヒールでこなし、音程差の激しい難しい曲を甘く高い声で歌う。

 

私は初めて、彼女たちのことを「もっと知りたい」と思った。意識の中には常にありながら、「もっと知りたい」とはこれまで一切思ってこなかった彼女たちについてを。

 

ありがたいことに、サブスクが発展している時代。彼女たちの音楽を、片っ端から聴いて、公式サイトやSNSや音楽記事を片っ端から読んだ。彼女たち、もう31歳なのか。なんならあ~ちゃん以外昭和生まれ…。既に日本の音楽界に確固たる地位を築いている彼女たちのことを、こんなにも知らなかったのかと、ちょっとだけ自分が恥ずかしくなった。

 

 

そんな彼女たちが、2020年、結成20周年と、デビュー15周年を迎える。

Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」は、そんなPerfumeが昨年秋にリリースしたベストアルバムをひっさげ、展開しているドームツアーだ。

 

2020年2月25日、私は初めて彼女たちのライブを見に、東京ドームへ行く。

ROCK IN JAPAN FES 2019に一緒に行った男友達を連れて。

彼もまた、ROCK IN JAPAN FES 2019で聴いたPerfumeに「魅せられた」一人だったのだ。

 

余談だが、彼は2月25日にひとつ年齢を重ねる。その日に、私は少しだけ、勇気が欲しい。

ROCK IN JAPAN FES 2019で、Perfumeの音楽に私が背中を押され、彼女たちの音楽を再認識したように、もう一度、東京ドームで私の背中を押してほしい。

 

 

 

Future Pop

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  • Perfume
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  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

Perfume The Best "P Cubed"

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  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: MP3 ダウンロード