Departure's borderline

フリーランス編集/ライターのいろいろな興味事

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うちら、ここで歌っとるよ。- Perfumeに「魅せられる」ということ

 

 

 ※rockin'on.com 内、「音楽文」にて掲載していただきました。

 

ongakubun.com

 

Perfumeというグループが大ブレイクしたのは2007年。かの有名な「ポリリズム」が大ヒットしたのがきっかけだろう。私は当時小学6年生。リビングで眺める音楽番組に出演するPerfumeを見て、その可愛らしい(けど難しい)ダンスをマネたりしていたものだ。

 

特に、ハマることはなかった。Perfumeは、2007年からすでに日本の音楽界において確固たる地位を手にしていたし、テレビの出演やタイアップ起用も多かったから、ニューシングルを音楽番組で見る程度。曲はなんとなく知っているけど、特にCDを買うこともない。Perfumeは生活に溶け込んでいて、その存在感は私の中では薄いものだった。

 

 

時は流れ、2019年。私はずいぶんと大人になった。自分で自由に使えるお金が増えてからは、ROCK IN JAPAN FESに毎夏足を運ぶのが恒例になっていた。

 

2019年8月4日。ROCK IN JAPAN FES 2019の2日目。うだるように暑い。ビールがひたすら美味しい。15時過ぎ、とにかく暑い。風があるから、少し疲れる。

 

一緒に来ていた男友達と、少し休もうかと、ビールを片手に芝生に座り込んだとき、わぁっと、一番大きなステージから歓声が沸き、静まり、そして音楽が流れた。

 

「そう見慣れた いつもの景色が
 変わるの 全てをつなげば
 騒ぎ出す 街中の全てが
 聞こえる。」
(Future Pop)

 

なんとなく、呼ばれた気がした。

―うちら、ここで歌っとるよ。

そう、背中を押された気がした。

 

Perfume、聴きにいこうよ」

重い腰を上げた私は、渋る男友達の手を引いて、大きいステージに吸い寄せられていった。私の目が、彼女たち3人を確認した頃、湿った熱風が私たちの間を吹き荒れていたけれど、ステージ上の彼女たち3人が浴びるこの風は、衣装をなびかせる演出のように見えた。綺麗だ。たくさんの大きなヒレをはためかせる、3匹の金魚が踊っているようだ。純粋に、そう思った。

 

 

彼女たちのステージは圧巻だった。ROCK IN JAPAN FES 2019の2日目、どのアーティストのステージが一番心に残ったかと問われれば、私はPerfumeと即答するだろう。私をステージに引き寄せた「Future Pop」から始まり、「Spending all my time」、「Baby cruising love」といった懐かしのナンバー。3人のハイヒールが激しく踊る「FLASH」。2019年最注目バンドであったKing Gnuがウラだったから、それを取り上げて自虐する可愛らしいMC。観客参加型のP.T.A.のコーナー。すべてがよかった。「魅せられた」と表現するのが一番しっくりくるくらいに。

 

 

彼女たちは儚くて、手に届きそうで届かない。手にとったら消えてしまいそうな、はじける炭酸のような笑顔を振りまきながら、ものすごく難しいダンスをハイヒールでこなし、音程差の激しい難しい曲を甘く高い声で歌う。

 

私は初めて、彼女たちのことを「もっと知りたい」と思った。意識の中には常にありながら、「もっと知りたい」とはこれまで一切思ってこなかった彼女たちについてを。

 

ありがたいことに、サブスクが発展している時代。彼女たちの音楽を、片っ端から聴いて、公式サイトやSNSや音楽記事を片っ端から読んだ。彼女たち、もう31歳なのか。なんならあ~ちゃん以外昭和生まれ…。既に日本の音楽界に確固たる地位を築いている彼女たちのことを、こんなにも知らなかったのかと、ちょっとだけ自分が恥ずかしくなった。

 

 

そんな彼女たちが、2020年、結成20周年と、デビュー15周年を迎える。

Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome」は、そんなPerfumeが昨年秋にリリースしたベストアルバムをひっさげ、展開しているドームツアーだ。

 

2020年2月25日、私は初めて彼女たちのライブを見に、東京ドームへ行く。

ROCK IN JAPAN FES 2019に一緒に行った男友達を連れて。

彼もまた、ROCK IN JAPAN FES 2019で聴いたPerfumeに「魅せられた」一人だったのだ。

 

余談だが、彼は2月25日にひとつ年齢を重ねる。その日に、私は少しだけ、勇気が欲しい。

ROCK IN JAPAN FES 2019で、Perfumeの音楽に私が背中を押され、彼女たちの音楽を再認識したように、もう一度、東京ドームで私の背中を押してほしい。

 

 

 

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