今年も、各出版社の文庫フェスがやってきましたね。
出版社とか関係なく、まんべんなく小説を読む方だと思って居るのですが、新潮文庫の100冊は毎年必ずチェックしています。
今年もいいラインナップが揃っているので、注目作品と既読作品(ほぼ全てが現代小説です)を総まとめ。For Meのメモですが、一応ネタバレあるかも。
恋する本
全11篇の恋愛短編集。登場人物それぞれに、何か大切で切ない「秘密」があり、その秘密を解き明かしていくのに少々読解力が必要。全てを通して読んだときに、全部、ダメな恋なんてないんだな、と思える作品でした。
②河野裕『いなくなれ群青』
最近の新潮で一番のアタリシリーズなのでは?「100冊」のジャンルで恋愛に分類されていることに少し驚き。文章がスッと頭に入ってこない印象があって、この続編は読んでいないのですが。
上野樹里で映画化もしましたが、半分くらい読めば結末がわかるなぁ・・・という印象。ただ、恋愛小説としては傑作だと思っていて、切なさと愛しさがあふれた作品です。映画も見ましたが、原作のほうが好き。映画を見た人には「あれ?」と思う箇所も散見すると思います。
④トルーマン・カポーティ/村上春樹訳『ティファニーで朝食を』
- 作者: トルーマンカポーティ,Truman Capote,村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/11/27
- メディア: 文庫
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村上春樹訳、というだけで惹かれはするものの、きっと読まないんだろうなと思う。ちなみに龍口直太郎訳はすでに読んでいて、オードリー・ヘプバーンの鮮やかな演技が脳裏に重なり素晴らしい作品だったと思っています。
シビレル本
①伊坂幸太郎『重力ピエロ』
春を生むことを決意した父と、兄弟の仲の良さ、全ての登場人物が力強い、楽しく、辛く、そして儚い物語。シリアスでデリケートな問題をしっかりと直面させる、面白い作品だなと思います。信じていれば重力はなくなるからね。
②藤岡陽子『手のひらの音符』
あの人は、今頃どこで何をしているのかな。そう思うことは誰でもあるでしょう。今ならSNSが発展しているから、幼少時代の友人と出会うことだってできなくはないけれど、人生に迷った時はこの本を読もうと思える1冊です。
③山田詠美『ぼくは勉強ができない』
勉強よりも大切なことなんてたくさんあるし、高校生がオトナの女性にモテて何が悪い。ショットバーの桃子さんと付き合って何が悪い。私にとってはどこかコメディ要素があるかのように見えるこの1冊、非常に読みやすくていろんな人にお勧めしてます。
考える本
①谷川俊太郎『ひとり暮らし』
非常に好きなエッセイ。結婚式より葬式が好きな詩人の暮らし方。死ぬその時まで、楽しみと喜びを失わずして死にたい、というその考えには非常に共感します。
ヤバイ本
キチガイだよなぁ・・・といつも思います。31歳で早逝した彼の残した短編は、全てが狂おしく、愛しく、柔らかい。買い求めたレモンを洋書店の棚に残す、それに何の意味があるんだい?今も梶井が生きていたら、一番にそれを問いたいものです。
まあ、ディズニーの裏側なんてこんなことはないんですけどね。ミッキーマウスの中にオッサンがいる、ということを小説にしてしまった、大問題作。非常に読みやすいけれど、これも半分読めば結末はわかってしまうのが難点。
ドスト、大好きですが、私はカタカナ名の登場人物が覚えられない傾向にあります。しかも、「ジョン」とか「ボブ」とかならまだいいのに、「ラスコーリニコフ」。覚えられません。今までに2回は読んでいるのですが、あらすじを言えと言われたら言えない1冊。
泣ける本
イマドキこんな「夜通し歩く」とかを学校側でやらせるのはどうかと思うし、実際にやったらPTAやら教育委員会やらに叩かれるのは目に見えているけれど、ここで語られる内容はとてもいい話。青春ってこんなんだったなぁと。泣ける本というよりはワクワクのほうが勝るんじゃないかな。
名作ですね。何度読んでも涙が涸れるほど泣いてしまう。毎日記憶を失う博士と、それを優しく穏やかに、美しく見守る家政婦母子。あと、作品に出てくる数式は全て美しいんです。数学的に、というよりは、小説上で読むからこそ美しく感じる数字というか。ね。
まとめ
今年の新潮100冊の傾向として、“THE、最新作!”というものが少ないように感じます。去年は新潮nexも多かったけれど、今回は目立つモノとして『いなくなれ群青』のみ。竹宮ゆゆこ先生が1冊も入っていなかったことには驚きました。
新装丁の文庫が少ないのあるかな。毎年買っている、新潮のプレミアムカバー作品に、星新一が入っていることも驚き。新潮のプレミアムカバーはシンプルなのにステキで、毎年楽しみです。
今年の夏はどんな夏にしよう。何を読もう。本棚を実家から自宅へ運んだので、大好きな本漁りも少しずつ再開します。